SARS-CoV-2に伴う術後VTEリスク上昇、術前6週~術後30日の感染で有意
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染に伴う、手術後の静脈血栓塞栓症(VTE)リスクの実態が報告された。術前6週~術後30日にSARS-CoV-2感染が診断された場合に、VTEの有意なリスク上昇が認められるという。英バーミンガム大学の主導により実施されている、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で施行された手術の患者転帰に関する国際共同前向きコホート研究のサブ解析の結果である。詳細は「Anaesthesia」に8月24日掲載された。
手術後には安静臥床などによりVTEが好発することは広く知られている。それに加え昨今、重症COVID-19患者でVTE発症率が上昇することが報告され、手術を受ける患者がSARS-CoV-2に感染していた場合に、VTEリスクがさらに上昇するのかという点が、クリニカルクエスチョンとして呈されていた。
この研究では、2020年10月に115カ国、1,630施設で施行された、全ての待機手術と緊急手術、計12万8,013人のデータが解析された。主要アウトカムは、手術から30日以内のVTEの発症とされた。SARS-CoV-2感染の診断が術前7日~術後30日の場合は「周術期の感染」、術前1~6週の場合は「最近の感染」、術前7週以上前の場合は「過去の感染」と定義し、SARS-CoV-2非感染の患者群を加え、合計4群でアウトカムを検討した。
術後VTEの発症率は、SARS-CoV-2非感染患者では0.5%(12万3,591人中666人)であるのに対して、周術期に感染していた患者では2.2%(2,317人中50人)、最近の感染では1.6%(953人中15人)、過去の感染では1.0%(1,148人中11人)だった。患者背景などの交絡因子を調整後、SARS-CoV-2非感染患者群を基準に他群の術後VTE発症率を比較すると、周術期の感染〔調整オッズ比(aOR)1.5(95%信頼区間1.1~2.0)〕、および最近の感染〔aOR1.9(同1.2~3.3)〕で、有意なリスク上昇が認められた。過去の感染によるリスク上昇は非有意だった〔aOR1.7(同0.9~3.0)〕。
VTEの発症は、術後30日以内の死亡率と独立して関連していた〔aOR5.4(同4.3~6.7)〕。また、SARS-CoV-2感染患者(周術期、最近、過去の合計)がVTEを発症した場合、死亡率は40.8%(76人中31人)に上った。一方、VTE非発症のSARS-CoV-2感染患者の死亡率は、7.4%(4,342人中319人)だった。なお、SARS-CoV-2非感染患者では、VTEを発症した場合の死亡率が17.6%(666人中117人)、VTE非発症では1.4%(12万2,929人中1,728人)だった。
以上より著者らは、「周術期および術前6週以内にSARS-CoV-2に感染した患者は、術後のVTE発症リスクが高いようだ」と結論付けた上で、「手術後の患者に対してはVTEリスクを低下させるための介入を標準化し行うべきだが、SARS-CoV-2感染が確認された患者のVTE予防と治療の最適なプロトコルの確立には、さらなる研究が求められる」と述べている。
なお、本研究はメドトロニック社が研究資金の一部を提供し行われた。(HealthDay News 2021年8月26日)
Abstract/Full Text
https://associationofanaesthetists-publications.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/anae.15563
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