COVID-19外来患者への抗血栓薬処方は支持されない
臨床的に安定しており入院を要さない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対しては、抗血小板薬や抗凝固薬の処方は有用でないとする研究結果が報告された。アスピリン、アピキサバンのいずれを用いても、心肺転帰はプラセボと差が認められないという。米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のJean M. Connors氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に10月11日掲載された。
COVID-19入院患者には血栓リスクが生じることが知られており、予防的な抗血栓療法が行われる。一方、状態が安定していて入院を要さない患者に、抗血栓療法が有用か否かは不明。Connors氏らはこの点を明らかにするために、COVID-19外来患者を対象とするプラセボ対照無作為化二重盲検試験を行った。
この研究は、2020年9月~2021年6月に米国内52の医療機関で実施された。7,000人の患者を登録する予定で開始されたが、安全性評価委員会が「事前の予想よりもイベント発生率が低い」との理由で早期打ち切りを勧告し、それに従い当初の計画よりも早く終了した。
解析可能患者数は657人(研究計画の約9%)で、年齢中央値54歳(四分位範囲46~59)、女性59%。全体を以下の4群に割り付け、45日間追跡した。抗血小板薬のアスピリン81mgを1日1回服用する群164人、抗凝固薬のアピキサバンを予防量(2.5mg)1日2回服用する群165人、同薬を治療量(5.0mg)1日2回服用する群164人、およびプラセボ群164人。評価項目は、全死亡、症候性の静脈/動脈血栓塞栓症、心筋梗塞、脳卒中、心血管または肺に起因する入院で構成される複合エンドポイントとした。
COVID-19診断から割り付けまでの中央値は7日、割り付けから抗血栓療法開始までは同3日。抗血栓療法開始前に入院に至った患者などを除外した558人のエンドポイント発生率は、アスピリン群0.0%、予防量アピキサバン群0.7%、治療量アピキサバン群1.4%、プラセボ群0.0%だった。
プラセボ群とのリスク差は、アスピリン群0.0%(95%信頼区間は算出不能)、予防量アピキサバン群0.7%(同-2.1~4.1)、治療量アピキサバン群1.4%(-1.5~5.0)であり、全ての実薬群でプラセボ群との有意なリスク差が認められなかった。安全性に関しては、出血イベントのプラセボ群とのリスク差が、アスピリン群2.0%(-2.7~6.8)と予防量アピキサバン群4.5%(-0.7~10.2)では有意差がなく、治療量アピキサバン群では6.9%(1.4~12.9)と有意差が存在した。ただし、いずれも重大な出血ではなかった。
本論文に対してイスラエルタ・アルバート・アインシュタイン病院(ブラジル)のOtavio Berwanger氏が付随論評を寄せている。その中で同氏は、「COVID-19の臨床からの報告と、無作為化されていない研究の結果に基づき、多くの医師は状態が比較的安定した外来患者に対しても、抗血小板薬や抗凝固薬を処方してきた。しかし本研究の結果から、パンデミックという緊急事態下でも、適切にデザインされた無作為化臨床試験によって治療の有用性と安全性を確認することの重要性が示された」と述べている。
なお、一部の著者が、バイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。また、治験薬とそのプラセボは、ブリストルマイヤーズスクイブ社とファイザー社が提供した。(HealthDay News 2021年10月18日)
https://consumer.healthday.com/aspirin-apixaban-not-beneficial-for-outpatients-with-covid-19-2655288592.htmlAbstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2785218
Editorial
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2785220
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