新型コロナウイルス感染症（COVID-19）パンデミック以前のメンタルヘルス状態が、COVID-19罹患リスクに影響を及ぼしている可能性が米国から報告された。住民のメンタルヘルスが不良な地域では、共変量を調整後も感染者率が有意に高いという。米イェール大学公衆衛生大学院のYusuf Ransome氏らの研究によるもので、詳細は「American Journal of Preventive Medicine」に10月31日掲載された。

　パンデミック以降、精神疾患とCOVID-19罹患リスクとの有意な関連を示した研究が複数報告されているが、一般住民のメンタルヘルス状態との関連を検討した研究は少なく、結果の一貫性も欠如している。これを背景にRansome氏らは、全米2,839郡の地域住民のメンタルヘルス状態と、COVID-19感染者率との関連を検討した。

　住民のメンタルヘルス状態は、米国民の健康リスクに関する疫学研究のために全国規模で実施されている「行動危険因子監視システム」のデータを利用し、調査時点から過去30日間のうつ、ストレス、情動に伴う問題などを報告した成人の年齢調整後メンタルヘルス不良日数で評価した。COVID-19感染者率は米ジョンズ・ホプキンス大学が公開しているリサーチデータを利用して、2020年1月22日～10月7日の人口10万人当たり累積症例数から算出した。なお、メンタルヘルス状態については、2010年と2019年の2時点で評価し、2019年時点の評価結果とCOVID-19感染者率との関連、および2010年から2019年までの評価結果の変化とCOVID-19感染者率との関連を検討した。

　2019年時点で過去30日間の年齢調整後メンタルヘルス不良日数は、平均4±0.62日であり、人口1万人当たりCOVID-19感染者率は207だった。両者の関連の解析に当たり、COVID-19罹患リスクに影響を及ぼし得る因子（年齢、性別、人種/民族、人口密度、医療保険加入率、失業率、収入、犯罪発生率、ジニ係数、住宅コスト、上下水道や厨房設備の有無など）は共変量として調整した。

　解析の結果、両者の間に有意な正の相関が認められた。具体的には、年齢調整後メンタルヘルス不良平均日数が1標準偏差分多いごとに、COVID-19感染者率は約6％高いという関連が存在した〔相対リスク比（RRR）1.059（95％信頼区間1.003～1.117）〕。2010年から2019年にかけて、住民の年齢調整後メンタルヘルス不良平均日数が増加していたのは、全体の77％に当たる2,172郡だった。ただしこの変化とCOVID-19感染者率との関連は認められなかった〔RRR1.013（同0.995～1.031）〕。

　この結果を基に著者らは、「メンタルヘルス不良とCOVID-19感染リスクの高さとの関連を説明可能なメカニズムを、今後の研究で明らかにする必要がある」と述べるとともに、「一般市民のメンタルヘルス状態を改善させるための施策を地域ごとに実行すべきである」と提言している。（HealthDay News 2021年11月8日）

https://consumer.healthday.com/prior-poor-mental-health-tied-to-more-covid-19-infections-2655490478.html

Abstract/Full Text
https://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(21)00541-9/fulltext

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