COVID-19発症前後に使用された薬剤と死亡リスクの関連
レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬やメトホルミンの使用状況と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の転帰との関連を検討した結果が、「BMJ Open」に12月31日掲載された。米サンフランシスコ退役軍人医療センターのArthur W. Wallace氏らの研究によるもので、いずれの薬剤も使用を中止した場合に死亡リスクが有意に上昇していたという。
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)はアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)受容体を足場として細胞内に侵入する。そのため、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、メトホルミンなどのACE2の発現や機能に影響を与える薬は、SARS-CoV-2感染後の経過にも影響する可能性がある。Wallace氏らは、COVID-19患者を対象とする観察研究によってこの点を検証した。
米国退役軍人の医療データベースを用いて、COVID-19入院患者9,532人を60日間追跡。ACEI、ARB、メトホルミンの使用状況により以下の4群に分け、全死亡リスクを比較検討した。
PCR検査陽性判定の2年前から陽性判定後60日間にかけて、当該薬剤の使用歴がない場合を薬剤未使用群として、他群との比較対照群とした。一方、陽性判定前の2年間に当該薬剤の使用歴があり、陽性判定後60日間の使用歴がない場合は「中止群」とし、陽性判定前の2年間に当該薬剤使用歴がなく、陽性判定後60日間に使用歴がある場合は「開始群」、前記のいずれの期間にも使用歴がある場合は「継続群」とした。
年齢、人種/民族、過体重、喫煙習慣、および基礎疾患(高血圧、糖尿病、心血管疾患、心不全、慢性閉塞性肺疾患、喘息など)の影響を調整後、陽性判定後60日以内の死亡リスクはいずれの薬剤でも中止群で有意に高く、開始群と継続群では有意に低かった。詳細は以下のとおり。
ACEIの中止群は、死亡リスクの調整オッズ比(aOR)が1.44(95%信頼区間1.24~1.67)であるのに対して、開始群はaOR0.28(同0.17~0.48)、継続群はaOR0.59(同0.50~0.69)。ARBは、中止群aOR2.12(同1.73~2.59)、開始群aOR0.54(同0.33~0.89)、継続群aOR0.68(同0.56~0.82)。メトホルミンは、中止群aOR1.54(同1.30~1.82)、開始群aOR0.19(同0.07~0.47)、継続群aOR0.35(同0.28~0.45)。
これらの関係は、感度分析として実施された機械的人工換気の要否や、β遮断薬の中止/継続で層別化した検討でも、一貫して認められた。さらに、補足的に実施された外来患者対象の分析でも、同様の結果が得られた。
著者らは、「われわれの研究結果は、COVID-19患者に対するACEI、ARB、およびメトホルミンの継続的な使用を支持しており、かつ、治療の適応がある患者に対しては、新たな使用開始が有益であることを示唆している」と結論付けている。(HealthDay News 2022年1月10日)
https://consumer.healthday.com/potential-covid-19-survival-benefit-with-ace-i-arb-metformin-use-2656323325.html
Abstract/Full Text
https://bmjopen.bmj.com/content/11/12/e050051.full
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