オミクロン株は無症状であっても伝播リスクが極めて高い
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の新たな変異株であるオミクロン株は、伝播性が極めて高いことが明らかになった。無症候性感染者は、ベータ株やデルタ株に比較し、7~12倍多く存在している可能性があるという。オミクロン株が世界で最初に報告された南アフリカ発のデータ。
報告されたデータは、米国立アレルギー感染病研究所(NIAID)が設立した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防のためのネットワーク「CoVPN」のLawrence Corey氏らが行った2件の予備的研究によるもの。プレプリントサーバーの「medRxiv」に12月27日、査読前論文が公開され、1月10日には、南アフリカ医学研究評議会(SAMRC)と同ネットワークがプレスリリースを発行した。
2件の研究のうち1件は、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製ワクチンの単回接種の有効性を検討するため、南アフリカのシソンケ郡で実施された大規模研究「Sisonke研究」のサブスタディとして解析された。Sisonke研究の参加者は、HIVに感染している医療従事者、または妊娠中・授乳中の医療従事者を含む1,200人。
Sisonke研究での無症状者におけるPCR検査陽性率は、ベータ株またはデルタ株優勢の時期には2.6%だった。しかし、オミクロン株出現後の2021年11月中旬~12月7日に検体が採取された577人では91人が陽性であり、陽性率16%と急増した。なお、HIV感染者の陽性率(16.0%)とHIV非感染者の陽性率(15.3%)は同程度だった。
もう一つの研究は、モデルナ社製ワクチンの有効性を検討するために、サハラ以南のアフリカで実施されている多施設共同研究「Ubuntu研究」のデータを用いて行われた。Ubuntu研究の参加者は、HIVまたはCOVID-19重症化リスク因子として知られている基礎疾患を有する人であり、2021年12月2日~17日に330人が登録されていた。330人のうちデータ欠落のない解析対象者は230人で、そのうち71人がPCR検査陽性であり、陽性率は31%に達した。
論文の著者らによると、「ベータ株やデルタ株が優勢だった時期に行われた研究からは、無症状者のPCR陽性率は1~2.6%と報告されていた。これは、オミクロン株が優勢となった現在と比べて、7分の1から12分の1程度の水準だった」という。これらのデータを基にCorey氏は、「オミクロン株は急速に世界中へ伝播しており、その伝播動態をより深く理解することが喫緊の課題であることは明らかだ」と述べている。
また同氏は、「無症候性感染者数は、非常に多いと考えられる。しかし、誰が保因者なのかを知ることは通常できない。自分自身を守り、なおかつ、他者へ伝播させてしまう可能性を抑制するために、マスク着用と手洗いを励行し、大規模イベントや屋内での集まりを避けるべきだ。そして、できるだけ早くワクチン接種を受けた方が良い」と、プレスリリースの中で述べている。(HealthDay News 2022年1月10日)
https://consumer.healthday.com/omicron-spread-2656251814.html
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.12.20.21268130v1
Press Release
https://www.samrc.ac.za/media-release/preliminary-findings-studies-south-africa-indicate-omicron-has-much-higher-rate
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