レムデシビル早期投与による転帰改善を示すリアルワールドデータ
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するレムデシビルの有効性を、リアルワールドデータで検証した結果が報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学のBrian T. Garibaldi氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical Infectious Diseases」に12月15日掲載された。検討の結果からGaribaldi氏らは、同薬の有効性を生かすには早期投与が重要である可能性を指摘している。
レムデシビルのCOVID-19に対する有効性は多くの研究から明らかになっているが、有効でないとする報告も一部存在する。このような結果の相違の背景として、対象患者の病期の相違などの関与が考えられるが詳細は不明。Garibaldi氏らは、レムデシビルのリアルワールドでの有効性を把握するため、以下の検討を行った。
この研究には、米国で180以上の急性期病院を含む多数の医療施設を展開している民間病院ネットワークであるHCAグループの患者データが用いられた。2020年2月23日~2021年2月11日に、9万6,859人のCOVID-19患者が入院し、そのうち4万2,473人(43.9%)が1回以上のレムデシビル投与を受けていた。レムデシビルが投与されていた患者は、年齢中央値65歳で、55.8%が男性であり、53.7%は非白人だった。また、入院からレムデシビル投与開始までの期間は中央値1日(四分位範囲0~2)で、投与期間は中央値5日(同4~5)だった。
時間依存性傾向スコアマッチングにより、背景因子の一致するレムデシビル投与群、非投与群、それぞれ1万8,328人のデータセットを作成。評価項目として、WHO重症度スコア(感染兆候なしの0点~死亡の8点で評価)の2点低下で定義した臨床的改善に要した期間や、生存退院率などを設定し比較した。
臨床的改善に要した期間は、レムデシビル投与群が7日(四分位範囲5~19)、非投与群は9日(同5~28)であり、28日目までに転帰が改善した患者の割合はレムデシビル投与群の方が有意に高かった〔調整ハザード比(aHR)1.19(95%信頼区間1.16~1.22)〕。また、酸素投与を要さない患者〔aHR1.30(同1.22~1.38)〕や、低流量の酸素投与で呼吸管理可能な患者〔aHR1.23(同1.19~1.27)〕では、28日目までに臨床的改善に至った割合が、レムデシビル投与群でより高かった。
28日目までの死亡リスクに対するレムデシビル投与の有意な影響は見られなかった〔aHR1.02(同0.97~1.08)〕。ただし、低流量酸素投与で呼吸管理可能であった患者では、レムデシビル投与群の死亡率の方が有意に低かった〔aHR0.85(同0.77~0.92)〕。
以上の結果を基にGaribaldi氏は、「レムデシビルは、患者が高流量酸素投与や機械的人工換気を要する状態に至る前の、できるだけ早い段階での使用が最善であることが分かった。一方で、高度な呼吸補助療法を必要とするような病期では、抗ウイルス療法が奏効するステージを過ぎている可能性がある」と述べている。
なお、数人の論文著者が、レムデシビルのメーカーであるギリアド・サイエンシズ社を含む、製薬企業との金銭的関係を明らかにしている。(HealthDay News 2022年1月28日)
https://consumer.healthday.com/real-world-data-shows-remdesivir-effective-early-in-covid-19-2656462509.html
Abstract/Full Text
https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciab1035/6463010
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