レムデシビルによるCOVID-19病勢抑制を確認――カナダの多施設研究
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するレムデシビルの有用性を示す新たなエビデンスが報告された。カナダ国内で行われた多施設共同研究の結果であり、レムデシビル投与群では機械的人工換気などを要する患者が有意に少なかったという。同国内の医療機関ネットワークであるナイアガラヘルスのKarim Ali氏らの研究によるもので、詳細はカナダ医師会発行の「CMAJ」に1月19日掲載された。
この研究は、COVID-19に対する複数の治療薬の有用性を検討した非盲検下の無作為化比較試験である「CATCO(Canadian Treatments for COVID-19)」のデータを解析したもの。CATCOにはカナダ国内の50以上の施設が参加し、レムデシビルのほかに、インターフェロンやヒドロキシクロロキンなどの有用性についても検討された。今回の報告はそれらのうち、レムデシビルに関するデータを解析したもの。
2020年8月14日~2021年4月1日の入院患者のうち、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染が確認され、24時間以上の生存が予測された、レムデシビル未投与の患者1,282人が登録された。無作為に2群に分け、全員に本研究実施時点での標準的な治療を行った上で1群(634人)にはレムデシビルを追加、他の1群(648人)は標準治療のみを継続した。レムデシビルの投与量は、初日に200mg、翌日以降は100mgであり、計10日間静脈内投与。
ベースライン時の患者背景は両群で有意差がなく、カナダにおけるCOVID-19入院患者の臨床像と一致していた。患者の54.5%は入院1日目に低流量酸素投与が開始され、21.4%はICUに収容されていた。データ解析は、研究参加同意の撤回、および継続入院中だった患者、計15人を除外し、1,267人で行われた。
主要評価項目である院内死亡率は、標準治療群の22.6%に対してレムデシビル追加群は18.7%であり、後者で低い傾向があったが群間差は有意でなかった〔相対リスク(RR)0.83(95%信頼区間0.67~1.03)〕。また、60日死亡率は同順に28.2%、24.8%だった〔RR0.88(同0.72~1.07)〕。
一方、二次評価項目である、ベースライン時に機械的人工換気を施行されておらず入院中にその必要が生じた患者は、標準治療群の15.0%に対してレムデシビル追加群は8.0%であり、レムデシビル投与による有意なリスク低下が認められた〔RR0.53(同0.38~0.75)〕。また、28日目までに酸素投与を必要としなかった期間は、標準治療群が14.2±11日に対してレムデシビル追加群は15.9±10.5日であり、後者の方が有意に長かった(P=0.006)。28日目までに機械的人工換気を要さなかった期間も同順に、19.5±12.3日、21.4±11.3日であり、レムデシビル追加群の方が有意に長かった(P=0.007)。
著者らは、「COVID-19患者へのレムデシビル投与の最も明白なメリットは、機械的人工換気を要する状態への進展を防ぐという点で認められた。この結果は、入院中の病勢進行を抑制する目的で、当初は重症度の低いCOVID-19患者に対してもレムデシビルを用いることに関して、おそらく付加価値があるであろうことを示唆している」と記している。
なお、一部の著者がバイオ医薬品企業との金銭的関係の存在や、本研究に関連する特許を出願係属中であることを明らかにしている。(HealthDay News 2022年2月1日)
https://consumer.healthday.com/remdesivir-has-some-benefits-for-hospitalized-covid-patients-2656461739.html
Abstract/Full Text
https://www.cmaj.ca/content/early/2022/01/19/cmaj.211698
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