5~11歳に対するコロナワクチンBNT162b2の有効性は限定的
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するファイザー社製ワクチン「BNT162b2」の5~11歳の子どもでの有効性は、12~17歳の子どもに比べて低いことを示すデータが報告された。研究の詳細は、プレプリントサーバーの「medRxiv」に2月28日、査読前論文として公開された。
論文の上席著者である米ニューヨーク州保健局のEli Rosenberg氏は、この研究結果について、「BNT162b2が過去の変異株に対応して開発されたワクチンであることを考えれば、結果は残念ではあるが驚くべきことでない」と語っている。また、研究結果は芳しいものではないながら、同氏や公衆衛生の専門家は、COVID-19罹患時の重症化予防などのために、この世代の子どもにもワクチン接種を勧めている。
Rosenberg氏らは、ニューヨーク州の3件の医療データベースを統合して、17歳以下のCOVID-19罹患状況を把握。2021年12月13日~2022年1月30日まで、1週間単位のCOVID-19罹患および入院患者数を、BNT162b2の接種を受けた群と受けていない群とで比較するという手法により、有効性の推移を検討した。なお、同州における検査陽性者に占めるオミクロン株の割合は、2021年12月13日時点では19%だったが、2022年1月24日時点では99%以上に達していた。また、1月30日時点で5~11歳の子どもの23.4%、12〜17歳の62.4%がワクチン接種を完了していた。
まず、COVID-19罹患に対する有効性の推移を見ると、12~17歳では11月29日からの1週間の罹患率比(IRR)は6.7(95%信頼区間6.2~7.2)であり、有効性(VE)は85%だった。それに対して1月24日からの1週間のIRRは2.0(同1.9~2.2)、VEは51%に低下していた。一方、5~11歳では12月13日からの1週間のIRRが3.1(2.7~3.6)、VEが68%で、1月24日からの1週間ではIRRが1.1(1.1~1.2)、VEは12%と大きく低下していた。
次に、COVID-19による入院に対する有効性の推移を見ると、12~17歳では11月29日からの1週間のIRRが16.9(4.1~148.8)、VE94%であり、1月24日からの1週間はIRR3.70(2.1~6.5)、VE73%だった。5~11歳では12月13日からの1週間はワクチン接種の入院患者が発生せずVEは100%で、1月24日からの1週間はIRR1.9(0.9~4.8)、VE48%だった。
ワクチン接種完了後、日数が経過するに伴いCOVID-19罹患に対する有効性が低下することも確認された。具体的には接種完了後13日未満では、12~17歳のVE76%、5~11歳は65%だが、接種完了後14~20日は同順に67%、51%、21~27日は60%、29%、28~34日は56%、12%と経時的に低下。そして接種完了後35~41日では、12~17歳は49%、5~11歳は-10%となり、5~11歳に対する有効性が消失した。
以上の結果は、BNT162b2接種は5~11歳児がオミクロン株に罹患した場合の重症化リスクを抑制するが、接種完了から1カ月程度でオミクロン株への罹患リスクを抑制する効果はほとんど失われることを意味する。
なぜ、11歳以下の子どもでは有効性が低いのか? 理由の一つは、11歳以下に用いられるワクチンの用量が、成人および12歳以上の子どもに対する用量の3分の1であるためと考えられる。ワクチンの用量設定による有効性の低下は、さらに少ない用量で実施された2~4歳の幼児対象の研究でも示されており、その研究の結果は期待されたものではなかった。
複数の専門家が、現行の用量では子どものCOVID-19罹患リスク抑制に、ワクチンがあまり役立たない可能性があることを認めている。ただし、ワクチン接種を受けた子ども本人の罹患リスクは十分抑制されなくても、罹患時の排出ウイルス量が減少し、家族や親戚内のハイリスク者への伝播リスクが低下するのではないかと期待する声もある。なお、ファイザー社、モデルナ社、ジョンソン・エンド・ジョンソン社はいずれも、オミクロン株に対応したワクチンを開発しており、現在、安全性・有効性を検証中。(HealthDay News 2022年3月1日)
https://consumer.healthday.com/covid-vaccine-for-kids-2656816211.html
Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Pfizer
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.02.25.22271454v1
当コンテンツは、AJ Advisers LLCヘルスデージャパン提供の情報を元に掲載しております。
ヘルスデージャパンのコンテンツに関する利用規定はこちらをご参照ください。
免責事項
- ギリアド・サイエンシズ インクおよびその子会社(併せて「ギリアド社」といいます)が事前に書面により同意した場合を除き、当コンテンツを複写、複製、印刷することは禁止されています。
- すべての情報は「現状のまま」提供されるものであり、ギリアド社が、当コンテンツに掲載されている情報の正確さを保証するものではありません。
- 当コンテンツで得られた情報の利用により、閲覧者または閲覧者が所属する団体等において不都合、不利益または損害などが発生することとなっても、その原因が何であれ、または上記情報の利用と上記不都合、不利益もしくは損害等との因果関係が直接的であれ、ギリアド社は一切の責任を負いません。
- 当コンテンツで掲載されている情報について、ギリアド社は問い合わせ等を受け付けていません。
- 当コンテンツは、未承認薬または適応外使用に関する広告活動の禁止の趣旨を考慮の上、医学・薬学の専門家が科学・医学の進歩について知る権利の重要性に鑑みて提供するものです。ギリアド社は、当コンテンツに含まれる情報によって閲覧者の購入意欲を昂進させる意図は有していません。