米国心臓病学会がCOVID-19心血管後遺症に関するガイダンス発行
米国心臓病学会(ACC)発行の「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に3月16日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の心血管後遺症に関する委員会報告が掲載された。米プロビデンス心臓研究所のTy J. Gluckman氏を長とするACC専門委員会が、臨床医向けのガイダンスとしてまとめたもの。
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染後には、COVID-19発症の有無にかかわらず、胸痛や息切れ、倦怠感、動悸などの心臓関連症状が長期間持続するケースのあることが報告されている。また、COVID-19に対するmRNAワクチンの接種後にも同様の症状が観察される。これらの症状に対する検査や治療法は確立されておらず、臨床では多くの未解決の問題が発生している。
本ガイダンスは、それら臨床医から多く寄せられる質問を収集し、専門家のコンセンサスに基づき、現時点で取り得る対策が集約されている。主たる内容は、SARS-CoV-2感染後の心臓症状を呈する18歳以上の成人患者のケアに関するもの。心筋炎、SARS-CoV-2感染急性期後の後遺症、および、スポーツ心臓病学(アスリートのプレーへの復帰)という3つのパートに大別され、それぞれに推奨事項を提示している。以下は、それら推奨事項の一部を抜粋したもの。
- 心筋炎:
- ・COVID-19の心臓への影響を疑う場合、まず心電図、心筋トロポニン(なるべく高感度試薬で測定)、心エコーを施行する。
- ・心筋炎が疑われ血行動態が安定している患者には、心血管核磁気共鳴法による評価を推奨。
- ・心筋炎と酸素投与を要するCOVID-19肺炎の併発には、コルチコステロイドを用いる。
- ・心膜病変が疑われる場合、NSAID、コルヒチン、コルチコステロイドによる治療が合理的。
- SARS-CoV-2感染急性期後の後遺症(PASC):
- ・PASCは、SARS-CoV-2感染から4週間以上経過後、新規発症、再発、または持続的に生じている健康問題として定義される。
- ・PASCとしての心血管症候群(PASC-CVS)は、標準的な検査で心血管疾患の存在を示す客観的な証拠が得られないにもかかわらず、幅広い心血管症状を呈する。頻度の高い症状として、頻脈、運動不耐性、倦怠感、動悸、胸痛、呼吸困難などがある。
- ・PASCが疑われる場合、合理的な初期アプローチとして、基本的な臨床検査(心筋トロポニンを含む)、心電図、心エコー、ホルター心電図、胸部画像検査、呼吸機能検査を考慮する。
- アスリートのプレーへの復帰(RTP):
- ・COVID-19回復後にも胸痛や動悸などの心肺症状が持続している、または、心臓病変の疑いのあるアスリートには、トライアド(心電図、心エコー、心筋トロポニン)検査を行う。トレーニング再開後に新たな心肺症状を来したアスリートにもトライアド検査を行う。
- ・心筋炎のあるアスリートは、3~6カ月間運動を控える。
著者らは、「これらの推奨事項は、2022年初頭までの知見に基づくものである。われわれのCOVID-19やSARS-CoV-2関連後遺症に対する理解が深まるに従い、改訂が重ねられるだろう」と記している。
なお、一部の著者が製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。(HealthDay News 2022年3月18日)
https://consumer.healthday.com/guidance-provided-on-cardiovascular-sequelae-of-sars-cov-2-infection-2656959319.html
Abstract/Full Text
https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2022.02.003
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