SARS-CoV-2関連敗血症による院内死亡率の推移
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染に伴う敗血症の実態が報告された。パンデミック初期には、SARS-CoV-2関連敗血症による院内死亡率が33.4%に上っていたが、その後は14.9%まで低下したと考えられるという。米ハーバード大学医学大学院のClaire N. Shappell氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に9月29日掲載された。
敗血症は一般的に細菌感染に伴い発症すると考えられてきたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以降、SARS-CoV-2も敗血症を来し得ることが報告されている。ただしその実態は明らかでない。Shappell氏らは、米国マサチューセッツ州内の病院5施設の入院患者の電子健康記録(electronic health record;EHR)を用いた後方視的コホート研究により、SARS-CoV-2関連敗血症の発症とそれによる死亡率の推移を検討した。
EHRに基づき、PCR検査でSARS-CoV-2陽性、かつ、臓器機能不全(酸素投与を要する低酸素血症、昇圧剤を要する低血圧、乳酸値上昇、クレアチニンまたはビリルビンの上昇、血小板減少などの所見で判定)を併発している記録のある場合を「SARS-CoV-2関連敗血症」と定義。一方、細菌性敗血症は、米疾病対策センター(CDC)の定義に基づいて判定した。
解析対象は、2020年3月~2022年11月の入院43万1,017件(患者数は26万1,595人で平均年齢57.9±19.8歳、女性55.9%)。このうち2万3,276人(5.4%)がSARS-CoV-2感染によるものであり、6,558人(1.5%)がSARS-CoV-2関連敗血症を発症し、SARS-CoV-2以外の細菌性敗血症患者は3万604人(7.1%)と推定された。
SARS-CoV-2関連敗血症による院内死亡は、解析対象期間全体で1,460人、院内粗死亡率は22.2%だった。経時的な推移を見ると、最初の四半期はSARS-CoV-2関連敗血症の発症が1,469件、院内死亡が490人、院内粗死亡率33.4%だったのに対して、最後の四半期では同順に450件、67人、14.9%であって、SARS-CoV-2関連敗血症による死亡率は経時的に低下していた〔四半期ごとの調整オッズ比(aOR)が0.88(95%信頼区間0.85~0.90)〕。一方、細菌性敗血症と推定されたケースは解析対象期間全体で3万604件、院内死亡4,451人、院内粗死亡率14.5%であり、経時的な変化は認められなかった〔四半期ごとのaOR1.00(同0.99~1.01)〕。
次に、解析対象全体から200人を無作為に抽出。EHRによる敗血症の判定精度を、実際の臨床医による診断と比較することにより検証した。その結果、実臨床では「sepsis-3」クライテリアに基づき、この200人のうち64人が敗血症と診断されており、本研究で用いたEHRによる判定結果は感度90.6%、特異度91.2%であって、臨床医の診断とよく一致していることが確認された。
著者らは、「成人の入院患者を対象とする後方視的コホート研究の結果、COVID-19パンデミックの最初の33カ月間における敗血症症例の約6件に1件は、SARS-CoV-2感染に伴うものであったことが明らかになった。SARS-CoV-2関連敗血症の院内死亡率は当初は高値だったが、時間の経過とともに低下し、解析対象期間終了時点では細菌性敗血症と推定される患者と同レベルになっていた」と総括。その上で、「これらのデータは、SARS-CoV-2関連敗血症による疾病負担の大きさを示すものと言える。また、敗血症の発生状況のモニタリングを目的としてEHRベースのアルゴリズムを活用可能であることが実証された」と付け加えている。
なお、一部の著者がEHR関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2023年10月4日)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2809966
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