臓器移植後の免疫抑制療法患者はCOVID-19入院リスクが高い
固形臓器移植後に免疫抑制療法を行っている患者における、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患時の入院リスクの実態が報告された。用いられている免疫抑制薬のタイプによって、入院リスクとの関連性が異なることも明らかにされている。フランス国立医薬品・保健製品安全庁のEpiphane Kolla氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に11月7日掲載された。
免疫抑制療法は感染症リスク上昇と関連しており、COVID-19についても臓器移植後のレシピエントは重症化リスクが高いことが、小規模な研究結果として既に報告されている。ただし、移植臓器や免疫抑制薬の違いによる影響の差異などは明らかにされていない。Kolla氏らはこれらの点について、フランスの医療関連情報ナショナルデータを用いた解析を行った。
2020年2月15日までに固形臓器移植が行われていた6万456人〔年齢中央値59歳(四分位範囲47~67)、男性63.7%〕を2022年7月末まで追跡し、COVID-19による入院のオッズ比を検討。移植されていた臓器は、腎臓が4万1,463人(68.6%)、肝臓が1万4,464人(23.9%)、心臓が5,327人(8.8%)、肺が2,823人(4.6%)。COVID-19入院は6,917人(11.4%)に発生し、移植臓器別のレシピエントのCOVID-19入院率は、腎臓12.7%、肝臓6.4%、心臓12.9%、肺18.0%だった。
交絡因子(年齢、性別、併存疾患、移植後経過年数、入院回数、居住地域、社会的剥奪指数など)を調整後、免疫抑制療法にステロイドが用いられているレシピエントはCOVID-19入院のオッズ比が有意に高く〔調整オッズ比(aOR)1.80(95%信頼区間1.69~1.92)〕、移植臓器別に見た場合でも全ての臓器移植レシピエントで有意なオッズ比上昇が認められた。また、ミコフェノール酸が用いられているレシピエントもCOVID-19入院のオッズ比が有意に高く〔aOR1.48(同1.37~1.59)〕、移植臓器別に見た場合は肺移植レシピエント以外で有意なオッズ比上昇が認められた。
シロリムス〔aOR2.71(1.20~6.09)〕やエベロリムス〔aOR1.24(1.01~1.51)〕が用いられている場合、心臓移植レシピエントでのみオッズ比の有意な上昇が認められた。
一方、肝臓移植レシピエントに対してタクロリムスが用いられている場合〔aOR0.77(0.61~0.98)〕や心臓移植レシピエントに対してシクロスポリンが用いられている場合〔aOR0.67(0.47~0.94)〕は、オッズ比の有意な低下が観察された。またこれら両剤ではオッズ比の有意な上昇は示されなかった。
アザチオプリンに関しては、オッズ比の有意な上昇または低下が認められなかった。
著者らは、「固形臓器移植後に免疫抑制療法を行っているCOVID-19患者の治療に際しては、これらの結果を考慮して適宜、免疫抑制薬の種類や用量を変更すべきではないか」と述べている。
なお、1人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2023年11月7日)
https://www.healthday.com/healthpro-news/maintenance-immunosuppressive-drugs-tied-to-severe-covid-19
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2811462
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Photo Credit: Adobe Stock
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