介護施設でのPASCの実態が明らかに
介護施設居住者における、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)罹患後の症状の遷延(post-acute sequelae of SARS-CoV-2;PASC)の実態が報告された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した居住者は、日常生活動作(ADL)や認知機能が大きく低下していたという。ただし、罹患から1年後には、非罹患者と差がない程度までに回復していたとのことだ。米ミシガン大学医学部および退役軍人アナーバー・ヘルスケアシステムのLona Mody氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Geriatrics Society」に11月10日掲載された。
PASCのリスク因子として、女性、COVID-19急性期の重症度、高齢、身体機能の低下などが報告されており、これらの多くが該当する介護施設居住者はPASCハイリスクと考えられるが、詳細は明らかでない。そこでMody氏らは、米国ミシガン州内の介護施設2施設の居住者を対象とする後方視的コホート研究を実施し、実態の把握を試みた。なお、介護施設居住者に対しては、少なくとも4半期に1回以上の頻度で、ADL等の評価が義務付けられており、その評価結果を解析に用いた。
2020年3月21日~2021年10月26日に、90日を超えて施設内に居住していて、データ欠落のない171人を解析対象とした。このコホートの主な特徴は、年齢は80歳以上が63.2%、女性が70.8%で、併存疾患数は中央値3(四分位範囲2~4)であり、ADLスコア(modified composite ADL score)は同13(10~14)、認知機能スコア(brief interview for mental status)は同12(6~15)だった。
研究期間中に90人(52.6%)がCOVID-19に罹患し、81人(47.3%)は陰性が続いていた。この両群で、年齢や性別の分布、ベースライン時の併存疾患数、ADLスコア、認知機能スコアに有意差はなかった。
年齢、性別、ベースラインの認知機能スコア、COVID-19急性期の重症度などを調整後、COVID-19罹患者は罹患直後にADLが有意に低下し〔-0.60ポイント(95%信頼区間-0.97~-0.19)、P=0.003〕、その後は統計的に非有意ながら(P=0.187)、ゆるやかな改善傾向が認められた〔月当たり0.05ポイント(同-0.02~0.11)〕。一方、認知機能スコアは、COVID-19罹患の有無にかかわらず月当たり-0.07ポイント(-0.13~-0.02)の速度での有意な経時的低下が観察された(P=0.006)。この加齢変化に加えてCOVID-19群では罹患直後に-0.71ポイント(-1.35~-0.06)の有意な認知機能低下が認められ(P=0.032)、その後は非罹患者との差が徐々に縮小していった。
なお、COVID-19罹患者は追跡期間中に30.0%が死亡し、対照群の12.8%よりも死亡リスクが有意に高かった(P=0.02)。また、急性期を脱した生存者も発症後平均約9カ月間にわたって、ADLや認知機能への影響が継続して認められた。ただし罹患から1年後の機能は、対照群とほぼ同レベルとなっていた。
著者らは本研究の限界点として、解析対象者の多くがワクチン未接種であったため、大半の高齢者が摂取済みとなった現在では、状況が異なる可能性があるとしている。その上でMody氏は、「介護施設の全ての居住者とスタッフ、および、施設を訪問する家族がワクチン接種を受けることで、COVID-19に対して脆弱な人々の罹患リスクと罹患後に継続する長期的な影響を抑制する必要がある」と呼び掛けている。(HealthDay News 2023年11月27日)
https://www.healthday.com/health-news/coronavirus/long-covid-now-common-in-us-nursing-homes
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://agsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jgs.18678
Press Release
https://www.michiganmedicine.org/health-lab/long-covid-happens-nursing-homes-too
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