ZUMA-1試験〈コホート4:安全性マネジメントの検討〉1,2)(海外データ)
試験概要
目的 | レベチラセタムの予防的投与*1に加えて、副腎皮質ステロイド*1及びトシリズマブ*2による早期介入が、イエスカルタによる治療を受けた患者でのサイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome:CRS)及び神経系事象(neurologic events:NEs)の発現頻度並びに重症度に及ぼす影響を評価する。 |
試験デザイン | 多施設共同、非盲検、第I/II相試験 |
対象 | 再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(primary mediastinal large B-cell lymphoma:PMBCL)、形質転換濾胞性リンパ腫(transformed follicular lymphoma:tFL)、高悪性度B細胞リンパ腫(high grade B-cell lymphoma:HGBCL)患者 46例(リンパ球除去化学療法実施例、イエスカルタ投与例、mITT解析対象、安全性解析対象:41例) |
試験方法 |
スクリーニング後、登録及び白血球アフェレーシスを治験実施医療機関で実施し、イエスカルタ製造施設に白血球アフェレーシスにより採取した細胞を輸送した。製造施設で末梢血中の単核細胞由来の活性化T細胞にレトロウイルスベクターを用いて抗CD19キメラ抗原受容体(chimeric
antigen receptor:CAR)遺伝子を形質導入した。形質導入されたT細胞をさらに拡大培養して治験製品を製造し、凍結保存した。 (データカットオフ日:2019年11月6日) |
評価項目 |
【主要評価項目】
|
解析計画 | 仮説検定は行わず、すべての評価項目の解析は記述的に行った。有害事象のグレード分類は、CRSはLeeらによる分類3)、CRS以外はCTCAE(common terminology criteria for adverse events)ver.4.03に従った。 |
安全性マネジメント及びブリッジング療法のために投与した薬剤に国内承認外のものを含むが、本資料は当局からの助言を受け当社で作成したサイトカイン放出症候群・神経系事象管理アルゴリズムの根拠資料のため掲載する。
- *1:レベチラセタム、副腎皮質ステロイドは、国内においてCRS及びNEsに対する予防投与の適応を有していない。
- *2:NEsではCRSを合併した場合にのみ投与。
- *3:等価用量の副腎皮質ステロイド(国内未承認薬を含む)も可であった。
- *4:本邦承認外の情報が一部含まれますので、使用に際しては電子添文等をご参照ください。
- *5:グレード2以上のNEsが発現しなかった場合は、漸減を経て中止した。
1)Topp MS, et al.: Br J Haematol 195(3), 388-398, 2021
本試験はKite社の支援を受けている。著者の中にKite社から雇用を受けている者、アドバイザリーボード料を受けている者などが含まれる。
2)ギリアド・サイエンシズ社内資料:ZUMA-1試験Cohort4
CRS及びNEsマネジメントのためのトシリズマブ及び副腎皮質ステロイドの投与
コホート1・2及びコホート4におけるAEマネジメント
コホート4では、CRSに対して、グレード1の段階からトシリズマブ及び副腎皮質ステロイドの介入を行い、NEsでは、グレード1の段階から副腎皮質ステロイドの介入を行いました。
コホート1・2では、再発又は難治性のDLBCL、PMBCL、tFL患者111例を対象にイエスカルタの有効性及び安全性を検討し、イエスカルタの承認時評価資料となった。
- *1:併存疾患を有する又は高齢患者。
- *2:トシリズマブで改善しない場合のみ標準用量を投与。
- *3:3日後に改善しない場合。
コホート4におけるトシリズマブ*4及び副腎皮質ステロイド*4の投与方法
コホート4 AEマネジメント | ||
---|---|---|
CRSグレード | トシリズマブ用量*5 | 副腎皮質ステロイド用量*5 |
1 | 3日後に改善しない場合、 8mg/kgを1時間かけて静脈内投与*6、 必要に応じて4~6時間ごとに反復投与 |
3日後に改善しない場合、 デキサメタゾン10mg×1回 |
2 | 8mg/kgを1時間かけて静脈内投与*6、 必要に応じて4~6時間ごとに反復投与 (24時間以内に最大3回投与可) |
デキサメタゾン10mg×1回 |
3 | グレード2と同様 | メチルプレドニゾロン1mg/kg静脈内投与1日2回 又は等価用量のデキサメタゾン |
4 | グレード2と同様 | メチルプレドニゾロン1000mg/日静脈内投与×3日 |
NEsグレード | トシリズマブ用量 | 副腎皮質ステロイド用量 |
1 | 該当なし | デキサメタゾン10mg×1回 |
2 | 8mg/kgを1時間かけて静脈内投与、 必要に応じて4~6時間ごとに反復投与 |
デキサメタゾン10mg1日4回 |
3 | グレード2と同様 | メチルプレドニゾロン1g 1日1回 |
4 | グレード2と同様 | メチルプレドニゾロン1g 1日2回 |
- *4:本邦承認外の情報が一部含まれますので、使用に際しては電子添文等をご参照ください。
- *5:治験責任医師の裁量で症状の改善に応じて漸減する。
- *6:800mgを超えないこと。
AE(adverse event):有害事象
Max S. Topp et al., British Journal of Haematology, 2021, 195, 388‒398
©2021 The Authors. British Journal of Haematology published by British Society for Haematology and John Wiley & Sons Ltd.
イエスカルタの使用にあたっては、コホート4に基づき設定された管理アルゴリズムをご参照ください。
患者背景
コホート4 (N=41) |
|
---|---|
疾患の内訳、例(%) | |
DLBCL | 26(63) |
PMBCL | 2(5) |
tFL | 10(24) |
HGBCL | 3(7) |
年齢 | |
中央値(範囲)、歳 | 61.0(19‒77) |
65歳以上、例(%) | 13(32) |
男性、例(%) | 28(68) |
ECOG performance status score:1、例(%) | 20(49) |
病期、例(%) | |
I又はII | 11(27) |
III又はIV | 29(71) |
IPI score、例(%) | |
0-2 | 21(51) |
3-4 | 20(49) |
CD19陽性、例/N(%)*1 | |
陽性 | 22/24(92) |
陰性 | 2/24(8) |
前治療の化学療法のライン数、例(%) | |
1 | 0 |
2 | 15(37) |
3 | 15(37) |
4 | 8(20) |
≧5 | 3(7) |
前治療のSCT、例(%) | 14(34) |
最後の化学療法レジメンに対してPD、例(%)*2 | 15(37) |
腫瘍量(SPD)、中央値(範囲)*3、mm2 | 2100(204-24758) |
LDH、中央値(範囲)、U/L | 263(145-4735) |
フェリチン、中央値(範囲)、ng/mL | 393(23-3457) |
抵抗性、例(%) | |
一次治療に抵抗性 | 0(0) |
二次治療以上の治療に抵抗性 | 28(68) |
二次治療以上の治療後の再発 | 5(12) |
ASCT後の再発 | 8(20) |
- *1:コホート4では、中央検査機関による保存及び試験中の治療前腫瘍生検の確認率は59%(24/41例)であった。別の2例は中央判定に送付された生検検体に腫瘍組織がないため、確定診断されなかった。
- *2:ASCT後に再発しなかった患者。
- *3:コホート4では、リンパ球除去化学療法前の最後の観察時とした。ブリッジング療法を受けた患者では、ブリッジング療法の前又は後のどちらの測定も可であった。
IPI(International Prognostic Index):国際予後指標、SCT(stem cell transplant):造血幹細胞移植、PD(progressive disease):進行、 SPD(sum of the products of diameters)、ASCT(autologous stem cell transplant):自家造血幹細胞移植
Max S. Topp et al., British Journal of Haematology, 2021, 195, 388‒398より改変
©2021 The Authors. British Journal of Haematology published by British Society for Haematology and John Wiley & Sons Ltd.
【使用上の注意】(一部抜粋)
5. 高齢者への適用
高齢者では一般に生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
安全性
CRS及びNEsの発現頻度及び重症度【主要評価項目】
CRSの発現率は93%(38/41例)で、そのうちグレード3以上の発現率は2%(1/41例)でした。また、NEsの発現率は61%(25/41例)で、そのうちグレード3以上の発現率は17%(7/41例)でした。
有害事象 | コホート4 (N=41) |
---|---|
CRS | |
全グレード、例(%) | 38(93) |
グレード1、例(%) | 13(32) |
グレード2、例(%) | 24(59) |
グレード3、例(%) | 1(2) |
グレード4、例(%) | 0 |
グレード5、例(%) | 0 |
発現するまでの期間、中央値(範囲)、日 | 2.0(1.0‒8.0) |
持続期間、中央値(範囲)、日 | 6.5(2.0‒16.0) |
NEs | |
全グレード、例(%) | 25(61) |
グレード1、例(%) | 14(34) |
グレード2、例(%) | 4(10) |
グレード3、例(%) | 7(17) |
グレード4、例(%) | 0 |
グレード5、例(%) | 0 |
発現するまでの期間、中央値(範囲)、日 | 6.0(1.0‒93.0) |
持続期間、中央値(範囲)、日 | 8.0(1.0‒144.0) |
参考:トシリズマブ及び副腎皮質ステロイド投与状況
トシリズマブ、副腎皮質ステロイドを投与された患者は、それぞれ76%、73%でした。
副腎皮質ステロイドを投与された患者の累積投与量(コルチゾン等価用量)の中央値は939mgで、43%が5回以上投与されました。
副腎皮質ステロイドの投与回数及び累積投与量
コホート4 (N=30) |
|
---|---|
副腎皮質ステロイドを投与された患者、例(%)*1 | |
1回 | 7(23) |
2回 | 7(23) |
3回 | 3(10) |
5回以上 | 13(43) |
累積副腎皮質ステロイド投与量、mg*2 | |
中央値(最小値‒最大値) | 939(313‒33463) |
平均値(標準偏差) | 5152(7654) |
- *1:イエスカルタの投与日又は投与後で退院日前に副腎皮質ステロイドを投与された患者。
- *2:投与から退院日までの累積全身性コルチゾン等価用量。
Max S. Topp et al., British Journal of Haematology, 2021, 195, 388‒398
©2021 The Authors. British Journal of Haematology published by British Society for Haematology and John Wiley & Sons Ltd.
有害事象【副次評価項目】
有害事象は、41例中全例(100%)に認められました。主な有害事象は、発熱39例(95%)、下痢及び低血圧各25例(61%)、貧血及び疲労各19例(46%)等でした。本試験において、B細胞性リンパ腫(病勢の進行)以外の有害事象による死亡は2例に認められ、その内訳はリンパ球除去化学療法による肺炎及び前治療の化学療法による急性骨髄性白血病各1例でした。重篤な有害事象は23例(56%)に認められ、主なものはB細胞性リンパ腫、肺炎、傾眠各3例(7%)等でした。本試験において、投与中止に至った有害事象は認められませんでした。
有害事象の一覧
(15%以上に発現した有害事象又は10%超に発現したグレード3以上のすべての事象を含む)
コホート4 (N=41) |
|||
---|---|---|---|
全グレード | グレード3 | グレード4 | |
すべての有害事象、例(%) | 41(100) | 12(29) | 22(54) |
発熱 | 39(95) | 10(24) | 0(0) |
下痢 | 25(61) | 4(10) | 0(0) |
低血圧 | 25(61) | 4(10) | 0(0) |
貧血 | 19(46) | 10(24) | 0(0) |
疲労 | 19(46) | 3(7) | 0(0) |
頭痛 | 16(39) | 1(2) | 0(0) |
好中球減少症 | 16(39) | 4(10) | 12(29) |
悪心 | 12(29) | 0(0) | 0(0) |
好中球数減少 | 12(29) | 1(2) | 11(27) |
悪寒 | 11(27) | 0(0) | 0(0) |
咳嗽 | 10(24) | 0(0) | 0(0) |
血小板数減少 | 10(24) | 2(5) | 2(5) |
傾眠 | 8(20) | 3(7) | 0(0) |
浮動性めまい | 7(17) | 0(0) | 0(0) |
脳症 | 7(17) | 2(5) | 0(0) |
白血球減少症 | 7(17) | 1(2) | 5(12) |
頻脈 | 7(17) | 1(2) | 0(0) |
血小板減少症 | 7(17) | 4(10) | 1(2) |
背部痛 | 6(15) | 0(0) | 0(0) |
便秘 | 6(15) | 0(0) | 0(0) |
低カリウム血症 | 6(15) | 1(2) | 0(0) |
低リン酸血症 | 6(15) | 4(10) | 0(0) |
低酸素症 | 6(15) | 3(7) | 0(0) |
振戦 | 6(15) | 0(0) | 0(0) |
嘔吐 | 6(15) | 1(2) | 0(0) |
白血球数減少 | 6(15) | 1(2) | 5(12) |
MedDRA version 22.0
Max S. Topp et al., British Journal of Haematology, 2021, 195, 388‒398
©2021 The Authors. British Journal of Haematology published by British Society for Haematology and John Wiley & Sons Ltd.
体内動態・バイオマーカー
血中抗CD19 CAR T細胞濃度【副次評価項目】
血中抗CD19 CAR T細胞の最高血中濃度はイエスカルタ投与後14日以内に認められました。
血清中バイオマーカー濃度【副次評価項目】
BL(baseline):ベースライン、GM-CSF(granulocyte-macrophage colony‒stimulating factor):顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、CRP(C-reactive protein):C反応性タンパク、MCP-1(monocyte chemoattractant protein-1):単球走化性タンパク質-1
Max S. Topp et al., British Journal of Haematology, 2021, 195, 388‒398
©2021 The Authors. British Journal of Haematology published by British Society for Haematology and John Wiley & Sons Ltd.
- Topp MS, et al.: Br J Haematol 195(3), 388-398, 2021
本試験はKite社の支援を受けている。著者の中にKite社から雇用を受けている者、アドバイザリーボード料を受けている者などが含まれる。 - ギリアド・サイエンシズ社内資料:ZUMA-1試験Cohort4
- Lee DW, et al.: Blood 124(2), 188-195, 2014
参考
ZUMA-1試験〈コホート4〉に基づき設定された管理アルゴリズム
サイトカイン放出症候群
グレード*1 | 対処法 | トシリズマブ*2 | 副腎皮質ステロイド*2 |
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グレード1 |
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グレード2 |
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グレード3 |
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グレード4 |
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- *1:Lee DW, et al.: Blood. 124(2), 188-195, 2014に基づく。
- *2:本邦承認外の情報が一部含まれますので、使用に際しては電子添文等をご参照ください。
- *3:免疫グロブリン静注療法、抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン等(これらに限定せず)の治療の開始を考慮してください。
神経系事象
グレード*1 | 対処法 | トシリズマブ*2 | 副腎皮質ステロイド*2 |
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グレード1 |
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サイトカイン放出症候群合併なし
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グレード2 |
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グレード3 |
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グレード4 |
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- *1:CTCAE ver. 5.0に基づく。
- *2:本邦承認外の情報が一部含まれますので、使用に際しては電子添文等をご参照ください。
- *3:ZUMA-1試験及びZUMA-7試験では痙攣予防として主にレベチラセタムが使用されました。
- *4:免疫グロブリン静注療法、抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン等(これらに限定せず)の治療の開始を考慮してください。