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イエスカルタ®点滴静注 Logo 主に三次治療以降を対象とした大細胞型B細胞リンパ腫患者における海外第I/II相試験

ZUMA-1試験1,2)(海外データ)

試験概要

目的
  • 第I相: イエスカルタの安全性を評価する。
  • 第II相: 再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(primary mediastinal large B-cell lymphoma:PMBCL)、及び形質転換濾胞性リンパ腫(transformed follicular lymphoma:tFL)患者におけるイエスカルタの有効性を客観的奏効率(objective response rate:ORR)に基づき評価する。
試験デザイン 多施設共同、非盲検、第I/II相試験
対象
  • 第I相: 再発又は難治性のDLBCL、PMBCL、tFL患者 8例(イエスカルタ投与例及び安全性解析対象:7例、用量制限毒性(dose-limiting toxicity:DLT)評価対象:6例)
  • 第II相: 再発又は難治性のDLBCL患者 81例(コホート1)、PMBCL、tFL患者 30例(コホート2)計111例(イエスカルタ投与例、mITT解析対象、安全性解析対象:101例)

診断は2008年WHO3)分類に基づく。

試験方法 スクリーニング後、登録及び白血球アフェレーシスを治験実施医療機関で実施し、イエスカルタ製造施設に白血球アフェレーシスにより採取した細胞を輸送した。製造施設で末梢血中の単核細胞由来の活性化T細胞にレトロウイルスベクターを用いて抗CD19キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)遺伝子を形質導入した。形質導入されたT細胞をさらに拡大培養して治験製品を製造し、凍結保存した。
イエスカルタ投与日の5日前から3日間、リンパ球除去化学療法(シクロホスファミド500mg/m2/日及びフルダラビン30mg/m2/日をいずれも3日間)を実施した。
イエスカルタは、抗CD19 CAR T細胞2×106個/kgを目安に単回静脈内投与した。最小目標投与量は抗CD19 CAR T細胞として1×106個/kgであった。体重が100kgを超える患者には、最大固定用量2×108個を投与した。

本試験の第II相では、2回の中間解析と、primary analysisを実施した。また、mITT解析対象集団すべてが、死亡又は12ヵ月/24ヵ月の追跡調査を受けた時点でも解析を実施した。
第II相試験でイエスカルタによる治療を受けた患者を対象として、5年フォローアップ解析を実施した。
評価項目 【主要評価項目】
  • 第I相:DLTとして定義した有害事象の発現率
  • 第II相:治験責任医師又は治験分担医師が2007年International Working Group(IWG)基準4)に従い判定したORR
【副次評価項目(第II相)】
  • 奏効期間(duration of response:DOR)
  • 無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)
  • 全生存期間(overall survival:OS)
  • 安全性:有害事象発現率、臨床検査値異常 等
解析計画 主要評価項目は、Clopper-Pearson法を用いて正確な両側95%CIを算出した。DOR、PFS、OSはKaplan-Meier法を用いて解析した。

24ヵ月後データ更新時点(データカットオフ日:2018年8月11日)の結果を示します。
5年フォローアップ時点(データカットオフ日:2021年8月11日)の結果はこちらに示します。

  • *: コホート1を対象とした中間解析2回と、コホート1・2の両者を対象としたprimary analysisを計画した。中間解析1(21例が投与3ヵ月後の効果判定を受けた時点)では、早期無効中止の判定基準に該当しなかったため試験を継続した。中間解析2(51例が投与3ヵ月後の効果判定を受けた時点)において、治験責任医師又は治験分担医師の判定に基づくORR[95%CI]は76.5[62.5, 87.2]%であった。事前に規定した閾値は20%であり、早期有効判定の基準を満たした。また、primary analysis(データカットオフ日:2017年1月27日)でも、有効判定の基準を満たした。

1)承認時評価資料:海外第I/II相試験(ZUMA-1試験)
2)Neelapu SS, et al.: Blood 141(19), 2307-2315, 2023
本試験はKite社の支援を受けている。著者の中にKite社から雇用を受けている者、Kite社またはGilead社からアドバイザリーボード料を受けている者などが含まれる。

患者背景

第I相
(N=7)
第II相
(N=101)
全体
(N=108)
年齢(歳)
平均値
(標準偏差)
52.4(17.5) 56.3(12.0) 56.1(12.4)
中央値
(最小値, 最大値)
59.0
(29, 69)
58.0
(23, 76)
58.0
(23, 76)
年齢層、例(%)
65歳以上 3(42.9) 24(23.8) 27(25.0)
性別、例
男性/女性 5/2 68/33 73/35
ECOG Performance Status、例(%)
0 4(57.1) 42(41.6) 46(42.6)
1 3(42.9) 59(58.4) 62(57.4)
疾患の内訳(治験責任医師による判定)、例(%)
DLBCL 7(100.0) 77(76.2) 84(77.8)
PMBCL 0(0.0) 8(7.9) 8(7.4)
tFL 0(0.0) 16(15.8) 16(14.8)
CD19の状態、例
陽性/陰性 3/2 74/8 77/10
病期、例(%)
I 2(28.6) 4(4.0) 6(5.6)
II 1(14.3) 11(10.9) 12(11.1)
III 2(28.6) 28(27.7) 30(27.8)
IV 2(28.6) 58(57.4) 60(55.6)
症状、病変の状態、例(%)
B症状あり 1(14.3) 10(9.9) 11(10.2)
脾臓病変あり 2(28.6) 13(12.9) 15(13.9)
節外病変あり 4(57.1) 71(70.3) 75(69.4)
Bulky diseaseあり 0(0.0) 16(15.8) 16(14.8)
骨髄病変あり 1(14.3) 8(7.9) 9(8.3)
IPI、例(%)
0 1(14.3) 3(3.0) 4(3.7)
1 2(28.6) 21(20.8) 23(21.3)
2 2(28.6) 31(30.7) 33(30.6)
3 1(14.3) 27(26.7) 28(25.9)
4 1(14.3) 19(18.8) 20(18.5)
抵抗性、例(%)
一次治療に抵抗性 0(0.0) 3(3.0) 3(2.8)
二次治療又はそれ以上の治療に抵抗性 3(42.9) 77(76.2) 80(74.1)
ASCT後の再発 4(57.1) 21(20.8) 25(23.1)
前治療、例(%)
ASCT 4(57.1) 25(24.8) 29(26.9)
抗CD20モノクローナル抗体 7(100.0) 101(100.0) 108(100.0)
アントラサイクリン系製剤 7(100.0) 101(100.0) 108(100.0)
白金製剤 6(85.7) 90(89.1) 96(88.9)
前治療の化学療法のライン数、例(%)
1 0(0.0) 3(3.0) 3(2.8)
2 1(14.3) 28(27.7) 29(26.9)
3 4(57.1) 29(28.7) 33(30.6)
4 1(14.3) 29(28.7) 30(27.8)
5 1(14.3) 5(5.0) 6(5.6)
>5 0(0.0) 7(6.9) 7(6.5)
最後の化学療法レジメンに対する反応(ASCT後に再発していない場合)、例(%)
SD<安定> 0(0.0) 13(12.9) 13(12.0)
PD<進行> 3(42.9) 67(66.3) 70(64.8)
腫瘍量(SPD)(mm2
n 7 100 107
平均値
(標準偏差)
2703.7(2291.8) 5038.8(4382.7) 4886.0(4309.7)
中央値
(最小値, 最大値)
2457.0
(320, 6062)
3721.0
(171, 23297)
3719.0
(171, 23297)

IPI(International Prognostic Index):国際予後指標、ASCT(autologous stem cell transplant):自家造血幹細胞移植、SD(stable disease):安定、PD(progressive disease):進行、SPD(sum of the products of diameters)

【使用上の注意】(一部抜粋)
5. 高齢者への適用

高齢者では一般に生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。

有効性(第II相試験)

治験責任医師又は治験分担医師の判定に基づくORR[主要評価項目]

24ヵ月後データ更新時における治験責任医師又は治験分担医師の判定に基づくORR(最良効果)[95%CI]は83.2[74.4, 89.9]%でした。 また、CR率は58.4%、PR率は24.8%でした。

DOR[副次評価項目]

24ヵ月後データ更新時におけるDORの中央値[95%CI]は11.1[4.2, 推定不能]ヵ月でした。

NE(not estimable):推定不能

PFS[副次評価項目]

24ヵ月後データ更新時におけるPFSの中央値[95%CI]は5.9[3.3, 15.0]ヵ月であり、24ヵ月後のPFSのKaplan-Meier推定値は38.9%でした。

NE(not estimable):推定不能

OS[副次評価項目]

24ヵ月後データ更新時におけるOSの中央値は推定できませんでしたが、24ヵ月後のOSのKaplan-Meier推定値は50.5%でした。

NE(not estimable):推定不能

DLTの検討(第I相試験)

DLTとして定義した有害事象の発現率[主要評価項目]

DLTは6例中1例に認められました。

DLTの定義:
イエスカルタ投与後30日以内に発現した、イエスカルタに関連ありと判定された有害事象のうち以下の基準に該当する事象

  • 投与当日から21日を超えて続くグレード4の好中球減少症
  • 投与当日から35日を超えて続くグレード4の血小板減少症
  • 気道確保のための挿管を要するグレード4の錯乱を含むイエスカルタ投与と関連のある有害事象
  • 3日を超えて持続する上記以外のすべてのグレード3の事象、及びすべてのグレード4の事象

ただし、以下はDLTとみなさなかった。

  • 2週間以内に少なくともグレード1又はベースラインに回復及び4週間以内に少なくともベースラインに回復した失語症、不全失語症、錯乱、又は認知障害
  • グレード3の発熱
  • リンパ球減少症、ヘモグロビン減少症、好中球減少症、及び血小板減少症と定義される骨髄抑制(血小板数が50×109/L未満の場合の出血、好中球減少症の場合の細菌感染症を含む)。ただし、好中球減少症及び血小板減少症が上記のDLTの定義を満たさない場合に限る。
  • イエスカルタ投与後2時間以内に発現する(イエスカルタ投与に関連した)即時型過敏反応で、標準治療によりイエスカルタ投与後24時間以内にグレード2以下に回復したもの
  • グレード3又は4の低ガンマグロブリン血症

安全性(第I相・第II相試験)

副作用[副次評価項目]

24ヵ月後データ更新時における副作用は、第I相並びに第II相を併合した集団108例中107例(99.1%)に認められました。主な副作用は、サイトカイン放出症候群100例(92.6%)、脳症62例(57.4%)、疲労32例(29.6%)、振戦30例(27.8%)、発熱27例(25.0%)等でした。また、イエスカルタとの因果関係を問わない臨床検査値異常として、投与後30日目までに回復しない重度の血球減少が41例(38.0%)に認められました。
本試験において、副作用による死亡は2例に認められ、その内訳は貪食細胞性組織球症及び脳損傷各1例でした。
重篤な副作用は39例(36.1%)に認められ、主なものは脳症23例(21.3%)、サイトカイン放出症候群12例(11.1%)等でした。本試験において、投与中止に至った副作用は認められませんでした。

  • *:基準を定めて分析し特定した重要な副作用(adverse drug reaction:ADR)を掲載した。

血球系及び臨床検査値関連の発現頻度については、【使用上の注意】「4 .不具合・副作用 (1)重大な不具合・副作用  6)血球減少」及び「4 .不具合・副作用 (2)その他の不具合・副作用」の項をご参照ください。

副作用の一覧

器官別大分類 基本語 イエスカルタ投与例
(N=108)
すべての副作用 107(99.1)
血液リンパ系障害 凝血異常 1(0.9)
心臓障害 頻脈 18(16.7)
不整脈 11(10.2)
心不全 2(1.9)
心停止 1(0.9)
胃腸障害 悪心 12(11.1)
下痢 8(7.4)
嘔吐 5(4.6)
腹痛 2(1.9)
口内乾燥 2(1.9)
便秘 1(0.9)
一般・全身障害および投与部位の状態 疲労 32(29.6)
発熱 27(25.0)
悪寒 17(15.7)
浮腫 2(1.9)
免疫系障害 サイトカイン放出症候群 100(92.6)
低ガンマグロブリン血症 14(13.0)
感染症および寄生虫症 その他の病原体感染 5(4.6)
ウイルス感染 1(0.9)
代謝および栄養障害 食欲減退 18(16.7)
体重減少 3(2.8)
脱水 3(2.8)
筋骨格系および結合組織障害 運動機能障害 9(8.3)
筋肉痛 7(6.5)
四肢痛 2(1.9)
器官別大分類 基本語 イエスカルタ投与例
(N=108)
神経系障害 脳症 62(57.4)
振戦 30(27.8)
頭痛 19(17.6)
失語症 19(17.6)
浮動性めまい 8(7.4)
運動失調 7(6.5)
痙攣発作 4(3.7)
ニューロパチー 2(1.9)
計算力障害 2(1.9)
ミオクローヌス 2(1.9)
精神障害 譫妄 15(13.9)
不安 2(1.9)
不眠症 1(0.9)
腎および尿路障害 腎機能不全 2(1.9)
呼吸器、胸郭および縦隔障害 低酸素症 8(7.4)
胸水 8(7.4)
呼吸困難 6(5.6)
咳嗽 5(4.6)
肺水腫 4(3.7)
皮膚および皮下組織障害 発疹 2(1.9)
血管障害 低血圧 13(12.0)
高血圧 2(1.9)
血栓症 1(0.9)

発現例数(%)
MedDRA version 21.0

  1. 承認時評価資料:海外第I/II相試験(ZUMA-1試験)
  2. Neelapu SS, et al.: Blood 141(19), 2307-2315, 2023
    本試験はKite社の支援を受けている。著者の中にKite社から雇用を受けている者、Kite社またはGilead社からアドバイザリーボード料を受けている者などが含まれる。
  3. Campo E, et al.: Blood 117(19), 5019-5032, 2011
  4. Cheson BD, et al.: J Clin Oncol 25(5), 579-586, 2007

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