ベクルリーの早期投与の有効性と安全性を比較した後ろ向き観察コホート試験(ReEs-COVID-19試験)(海外データ)
Pantazis N, et al.: Microorganisms. 2023 Aug 3;11(8):1998.
本論文の著者の一部は、ギリアド・サイエンシズ社の社員または支援を受けており、本論文はギリアド・サイエンシズ社の支援を受けています。
試験概要
目的 | ベクルリーの早期投与(入院後24時間未満の投与)は後期投与(入院後24時間以降の投与)と比較して回復までの期間が短く、安全性も過去の国際臨床試験と変わらないという仮説のもと、ギリシャにおけるCOVID-19入院患者治療におけるベクルリーの使用パターン、有効性、安全性を明らかにし、ベクルリーの有効性に影響する因子を調査する |
対象 | 2020年9月〜2021年2月にギリシャの6クリニックのいずれかに入院し、PCR検査でSARS-CoV-2陽性が確認された18歳以上の成人患者(入院初日にICU入院、他のCOVID-19の治験に参加した患者は除く) |
方法 | 後ろ向き観察コホート研究。ベースラインの患者背景(人口統計学的・社会的特徴、入院時の臨床状態、病歴、重症化の危険因子など)、入院の経過と転帰、入院後30日までの血清トランスアミナーゼ上昇、急性腎障害等のデータが患者ファイルと病院記録から収集された。 |
主要評価項目 | 回復までの期間*、安全性評価(血清トランスアミナーゼ値の上昇、急性腎障害)**
*入院後30日以内の退院[活動制限の有無は問わない]または酸素療法不要で継続的な治療不要[8段階順序尺度の1〜3] |
副次評価項目 | 15日・30日時点における臨床状態(8段階順序尺度)、ベクルリーの使用パターン(投与期間[5日未満、5日、6-10日、10日超]、投与時期[早期、後期]) |
解析計画 | 回復までの期間は、生存時間解析(Kaplan-Meier曲線、log-rank検定、多変量Cox比例ハザードモデル)を用いて分析した。回復しなかった患者及び死亡患者のデータは29日時点で打ち切った。評価項目はベースラインの重症度(重症:侵襲的または非侵襲的換気が必要、酸素投与が必要、SpO2≦94%室内気、呼吸数≧24回/分のいずれかを満たす、軽症/中等症:重症以外)でサブグループ解析を行った。 |
7. 用法及び用量に関連する注意(抜粋)
7.2 SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始し、3日目まで投与する。ただし、SARS-CoV-2による肺炎を有する患者では、目安として、5日目まで投与し、症状の改善が認められない場合には10日目まで投与する。
試験のサマリー
- 早期投与群は後期投与群と比べて3日間(中央値)の入院期間短縮がみられました(主要評価項目)。
- 入院後24時間未満にベクルリー投与を行った場合、24時間以降に投与された場合に比べ軽症・中等症では4日間(中央値)、重症では3日間(中央値)の入院期間短縮がみられました(主要評価項目のサブグループ解析)。
- ベクルリー投与開始後に肝機能異常を示した患者は69例(6.9%)で、そのうち投与中止しなければならなかった患者は4例でした。
- ベクルリー投与開始後に急性腎障害(AKI)を示した患者は21例(2.1%)で、そのうち投与中止しなければならなかった患者は1例でした。
本試験は以下のリミテーションがあります。
- 本研究は観察的、後方視的、単一群であり、他の治療との比較ができていません。
- 実臨床を反映しているため、重症の入院患者は早期にベクルリーを投与する傾向にありました。
患者背景
§名目上のp値
-
Pantazis N, et al.: Microorganisms. 2023 Aug 3;11(8):1998. doi: 10.3390/microorganisms11081998. https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
本論文の著者の一部は、ギリアド・サイエンシズ社の社員または支援を受けており、本論文はギリアド・サイエンシズ社の支援を受けています。
ベースライン時の治療状況
§名目上のp値
- *
投与が延期された患者のうち、重症患者全例と軽症/中等症患者38/58例(65.5%)は、酸素供給療法開始と同時にベクルリーの投与を開始した
- **
759/778例の患者は、酸素供給療法を必要とした時点でデキサメタゾンによる治療を開始した。
- Pantazis N, et al.: Microorganisms. 2023 Aug 3;11(8):1998. doi: 10.3390/microorganisms11081998. https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
本論文の著者の一部は、ギリアド・サイエンシズ社の社員または支援を受けており、本論文はギリアド・サイエンシズ社の支援を受けています。
回復までの期間(主要評価項目)
- 回復までの期間は、後期投与群(24時間以降)12日(11-14日)に比べて早期投与群9日(9-10日)で有意に短かった(主要評価項目)。
*数値は中央値(四分位範囲)
§名目上のp値
- Pantazis N, et al.: Microorganisms. 2023 Aug 3;11(8):1998. doi: 10.3390/microorganisms11081998. https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
本論文の著者の一部は、ギリアド・サイエンシズ社の社員または支援を受けており、本論文はギリアド・サイエンシズ社の支援を受けています。
重症度別の回復までの期間(主要評価項目のサブグループ解析)
- 軽症/中等症患者において回復までの期間は、後期投与群の12日(11-14日)に比べて早期投与群では8日(7-9日)と有意に短縮しました。
- 重症患者において回復までの期間は、後期投与群の13日(11-15日)に比べて早期投与群では9日(9-10日)と有意に短縮しました。
*数値は中央値(四分位範囲)
§名目上のp値
- Pantazis N, et al.: Microorganisms. 2023 Aug 3;11(8):1998. doi: 10.3390/microorganisms11081998. https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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ReEs-COVID-19試験の安全性(主要評価項目)
- 入院期間中の血清トランスアミナーゼ値の上昇、急性腎障害は130例に認められました(12.9%)。そのうち93例(9.3%)がステージ1※、37例(3.7%)がステージ2※の肝機能障害でした。4例(0.4%)で肝機能障害によりベクルリー投与が中止されました。
- 入院期間中の急性腎障害(AKI)は30例(3.0%)に認められました。Ⅰ型AKIは25例(2.5%)、Ⅱ型AKIは5例(0.5%)であり、Ⅲ型AKIはみられませんでした。Ⅱ型AKIの既往のある患者はすべて入院時に重度のCOVID-19を有していました。1例(0.1%)で腎機能障害によりベクルリー投与が中止されました。
- 有害事象によりベクルリー投与を中断した患者は9例(0.9%)でした。
- 血清トランスアミナーゼ値は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の閾値に基づいて2段階に分類されました。
ステージ1:ALTおよび/またはASTが正常値上限(ULN)の3~5倍、
ステージ2:ALTおよび/またはASTがULNの5倍以上
本論文中に上記以上の詳細な安全性に関する情報の記載がないため、本製品の安全性情報につきましてはDIをご参照ください。
- Pantazis N, et al.: Microorganisms. 2023 Aug 3;11(8):1998. doi: 10.3390/microorganisms11081998
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