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ベクルリー点滴静注用 腎機能障害のあるCOVID-19患者におけるベクルリーの安全性と有効性に関する傾向スコアマッチング解析(海外データ)

「禁忌を含む注意事項等情報」等はDIをご参照ください。

腎機能障害のあるCOVID-19患者におけるベクルリーの安全性と有効性に関する傾向スコアマッチング解析(海外データ)

Yang E, et al.: BMC Infect Dis. 2024; 24(1): 3

試験概要

目的 韓国におけるCOVID-19パンデミック時の腎障害を有するCOVID-19患者に対するベクルリーの安全性と有効性を検討した。
対象 韓国ソウルでSARS-CoV-2の感染が確認された患者564名を対象とした多施設レトロスペクティブコホート研究。4施設がこの研究に参加し、2020年3月1日から2022年9月30日までに入院した患者が登録された。
方法 ベースラインの特徴、基礎疾患、酸素投与、臨床検査および臨床転帰などのデータを電子カルテから収集した。データ解析のため、患者をベクルリー群と標準治療群(対照群)の2群に分けた。
主要評価項目 ベクルリー治療開始5日後のeGFR、クレアチニン、AST、ALT値で比較したベクルリーの安全性。透析未導入の患者における入院中の新規血液透析の有無
副次評価項目 入院中の全死因死亡率
解析計画 連続変数は中央値および四分位範囲として示し、カテゴリー変数は数値と百分率で示した。患者は2群(ベクルリー群と標準治療群)に分けられた。両群を比較するために、連続変数にはMann-Whitney U検定を、カテゴリー変数にはχ2検定またはFisherの正確検定を用いた。転帰変数に影響を及ぼす交絡変数の影響を排除するため、基本的な特徴を分析する際には、両群のデータのバランスを図るため傾向スコアマッチング法を用いた。ベクルリー治療患者は、傾向スコアマッチングに従って標準治療患者と1:1でマッチングした。マッチングしたデータを用いて、ベクルリー群と標準治療群の転帰変数の差を再度分析した。両群のマッチングデータを比較して有意な変数がみつかった場合は、これらの変数を用いて多変量ロジスティック回帰分析を行った。

腎機能障害のあるCOVID-19患者におけるベクルリーの安全性と有効性に関する傾向スコアマッチング解析のサマリー(海外データ)

  • 傾向スコアマッチング後、ベクルリー治療開始5日後のクレアチニン値とeGFR値は両群間で有意差はみられませんでした。AST値とALT値はベクルリー群では標準治療群より有意に高い値でしたが(p=0.037、p=0.017、名目上のp値)、正常範囲内でした(主要評価項目)。
  • 傾向スコアマッチング後、ベクルリー群では新規透析の開始頻度が標準治療群より有意に高いことが認められましたが(p=0.034、名目上のp値)、ベクルリー治療が新規透析と独立して関連しているかを検討した多変量ロジスティック回帰分析では、ベクルリー治療は新規透析のリスク因子ではありませんでした(主要評価項目) 。
  • 多変量ロジスティック回帰分析において、ステロイドとベクルリーの使用は全死因死亡率に影響する独立したリスク因子ではありませんでした(副次評価項目)。
  • 本研究には下記に示す限界があります。
    ・多施設共同のレトロスペクティブな研究であり、ベクルリーの投与は臨床医によって決められていたため、各施設の方針や臨床医の治療方針には偏りがある可能性があります。
    ・ステロイド使用の割合は、ベクルリー5日間投与において傾向スコアマッチングを使用しても両群の均衡が保たれませんでした。
    ・肺炎の重症度などの調整されていない交絡因子が存在する可能性があります。

安全性に関するこれ以上の記載は論文中にないため、詳細は電子添文の安全性情報をご参照ください。

試験デザイン(海外データ)

  • 合計586例が組み入れられ、6例はALT値上昇のため、16例は入院3日後にCOVID-19と診断されたため除外されています。
  • 合計564例の患者が登録され、そのうち229例(40.6%)にベクルリーが投与されています。

患者背景(海外データ)

  • マッチング前後のベクルリー群と標準治療群のベースライン特性を以下に示します。
  • 傾向スコアマッチング後、肺炎を有している患者、酸素供給を必要とした患者は、ベクルリー群のほうが標準治療群より有意に多いことが認められました(どちらもp<0.001、名目上のp値) 。

eGFR:推定糸球体濾過量
IQR:四分位範囲、
ECMO:体外膜酸素療法
AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ

a:適応:(1)酸素飽和度が室内空気で94%以下、(2)酸素供給が必要、または(3)ウイルス性肺炎を示唆する胸部画像肺炎
b:COVID-19治療のためのステロイド使用
§:名目上のp値
連続変数はMann-Whitney U検定、カテゴリー変数にはχ2検定またはFisherの正確検定を用いた

Yang E, et al.: BMC Infect Dis. 2024; 24(1): 3.より改変。https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

ベクルリー治療開始5日後のeGFR、クレアチニン、AST、ALT値の推移と新規透析の有無(主要評価項目、海外データ)

  • 傾向スコアマッチング後、クレアチニン値とeGFR値は両群間で有意差はみられませんでした。
  • 傾向スコアマッチング後、AST値とALT値はベクルリー群のほうが標準治療群より有意に高い値でしたが(p=0.037、p=0.017、名目上のp値)、正常範囲内でした。
  • 傾向スコアマッチング後、ベクルリー群では新規透析の開始頻度が標準治療群より有意に高いことが認められました(p=0.034、名目上のp値)。

eGFR:推定糸球体濾過量
IQR:四分位範囲、
ECMO:体外膜酸素療法
AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ

§:名目上のp値
連続変数はMann-Whitney U検定、カテゴリー変数にはχ2検定またはFisherの正確検定を用いた

Yang E, et al.: BMC Infect Dis. 2024; 24(1): 3.より改変。https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

入院中に新規透析開始となった因子の多変量ロジスティック回帰分析 (主要評価項目、海外データ)

  • ベクルリー治療が新規透析と独立して関連しているかどうかを検討するため、交絡因子(NEWS-2スコア、肺炎、酸素供給量、AST、ベクルリー治療)を調整した後、両群の多変量ロジスティック回帰分析を行いました。
  • 多変量ロジスティック回帰分析をしたところ、ベクルリー治療は新規透析のリスク因子ではありませんでした(p=0.103、名目上のp値)。

AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
§:名目上のp値

Yang E, et al.: BMC Infect Dis. 2024; 24(1): 3.より改変。https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

入院中の全死因死亡率の多変量ロジスティック回帰分析(副次評価項目、海外データ)

  • ステロイドの使用、ベクルリーの使用、入院時の重症度スコアを交絡因子とした多変量ロジスティック回帰分析において、ステロイドとベクルリーの使用は全死因死亡率に影響する独立したリスク因子ではありませんでした。

§:名目上のp値

8. 重要な基本的注意(抜粋)
8.1 肝機能障害があらわれることがあるので、投与前及び投与開始後は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。[11.1.1 参照]
8.3 添加剤スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムにより腎機能障害があらわれるおそれがあるので、投与前及び投与開始後は定期的に腎機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。[9.2 参照]
9. 特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)
9.2 腎機能障害患者
添加剤スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムの尿細管への蓄積により、腎機能障害が悪化するおそれがある。非臨床試験でレムデシビルに腎尿細管への影響が認められている。腎機能障害を有する患者を対象とした臨床試験は実施していない。[8.3、15.2、16.6.2 参照]
9.2.1 重度の腎機能障害(成人、乳児、幼児及び小児はeGFRが30mL/min/1.73m2未満、正期産新生児(7日~28日)では血清クレアチニン1mg/dL以上)の患者
投与は推奨しない。治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を考慮すること。[9.7、17.1.1、17.1.2 参照]

Yang E, et al.: BMC Infect Dis. 2024; 24(1): 3.より改変。https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

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